大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(ラ)748号 決定

仮処分決定に対し異議の申立がなされた場合に、右仮処分の執行の一時の停止又は取消をなすことは、原則として許されず、右仮処分の内容が権利保全の範囲を逸脱して権利の終局的実現を命じているとき、若しくはその執行により債務者に回復することのできない損害を与えるおそれのある場合にのみ例外として、民事訴訟法第五一二条、第五〇〇条を準用して、執行の一時の停止又は取消が許されるのである。本件記録によれば、藤沢簡易裁判所のなした本件仮処分決定は、本件物件を執行吏の保管に付し、現状を変更しないことを条件として、抗告人にその使用を許す趣旨のものであるから、右仮処分の内容は、相手方の本件建物の収去による土地明渡請求権を保全する範囲を逸脱し、右権利の終局的実現を命じたものではない。また、抗告人の提出した疏明資料によるも、右仮処分の執行によつて、抗告人の被る損害が少くないことは窺えないではないが、それだけでは回復することのできない損害とはいえないし、他に、抗告人に回復することのできない損害を生ずると認めることのできる事情はなにも認めることができない。従つて、同簡易裁判所が抗告人のなした疏明によつては上記事由が認められないとして、右仮処分執行の一時の取消の申立を却下したのは正当というべきである。原決定はその意をつくしていないきらいはあるが、その(二)及び(三)の記載によれば、原裁判所は右藤沢簡易裁判所のなした決定の当否についても判断した上、これを相当として抗告人の抗告を却下したものと解することができる。もつとも、原決定が執行停止又は取消の申立について実質的審理を加えて許否を決した裁判については、さらに不服の申立をなし得ないことは民事訴訟法第五〇〇条第三項の明定するところである旨の判示をなしていることは所論のとおりである。民事訴訟法第五〇〇条第三項後段に「その裁判に対しては不服を申立てることを得ず」とあるのは、同条を適用すべき要件が存在するものとして、執行の停止又は取消をなした裁判に対しては不服の申立をすることを得ない旨を規定したに止まり、同条の要件を具備しない場合になした裁判又は右要件を具備しないとして申立を却下した裁判に対しては、同法第五五八条により抗告をなし得るものと解するを相当とする。従つて、右原判示中申立を却下した裁判に対しても不服の申立をなし得ない趣旨の部分は誤りであるといわなければならない。

(村松 伊藤 杉山)

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